Maison Pichon Uzèsアトリエ訪問記

オ・ボール・ドゥ・ローでは、中世の面影が色濃く残る南フランスの街Uzèsの200年の伝統を誇る窯元「Maison Pichon Uzès」と提携し、商品を取り扱っております。

現在、7代目にあたるChristophe Pichon氏によって受け継がれている「Maison Pichon Uzès」。
高いデザイン性と伝統に培われた確かな技術力によりひとつひとつ丹念こめて作られる作品の数々は、ラルフローレンなどの世界の著名人や三ツ星シェフÉdouard Loubetの「La Bastide de Capelongue」をはじめとする多くの有名レストランなどからも注文が多く、人気のブランドとして今も飛躍し続けています。

Christophe PICHON

PICHONはこれまでに数々の賞を受賞しており、フランス政府からは優れた工業、手工業のノウハウを持つフランスの企業に認められる「Entreprise du Patrimoine Vivant (EPV)」(無形文化財企業)の認定ラベルを付与されています。
また、Uzèsにある美術館”Musée Georges Borias”には専用の展示室が設置されるほど、その伝統的窯元としての名声を欲しいままにしている素晴らしい企業です。その人気は衰えを知らず、”ELLE”, “FIGARO”, “Marie claire idée”, “Maison Française”, “Maison & Decoration”など数々の有名誌にも取り上げられています。

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先日、南仏ラングドック・ルシヨン地方の町Uzèsに立地する「Céramiques PICHON」のアトリエを訪問し、7代目当主のChristophe Pichon氏から制作過程などをご紹介いただきました。写真では少し伝わりづらいかもしれませんが、かなり大きなアトリエです。

PICHONアトリエの外見
PICHONアトリエの内部

磁器の制作過程とPICHONの歴史について語る7代目当主の目は真剣そのもの。
「Céramiques PICHON」の成り立ち、製作工程全般、手がけた色々な仕事や取引先などについて熱く語るChristophe氏、その情熱と仕事に対する真摯な姿勢にとても感銘を受けました。
ひとつ磁器工房が家族代々7代も続くというのはやはりとても異例のことかと思います。技術の伝承だけではなく、磁器・仕事に対する考え方や想いを子孫に伝え、受け継ぐということを非常に大事にしているように感じられました。
彼の情熱を目の当たりにして、こちらも身の引き締まる思いになりました。

Christophe PICHON

1950年頃までは地元Uzèsの赤い粘土を使っていたPICHONですが、制作する作品がキッチンウェアからテーブルウェアに変遷するに従って、柔らかく美しい白を引出すカオリン成分を多く含むリモージュの土に切り替えていったそうです。
“リモージュの白粘土”は有名ですが、見せていただいた粘土は想像していたものより茶色が濃いものでした。

PICHONが使用している粘土

カオリン(純粋に近い花崗岩)そのものの色は白いのですが、それが砕け流され不純物が混ざって出来上がる粘土は、黄色、茶色、黒などの色が付いて見えるそうです。
第一段階、まずこの粘土を型がセットされているプレスにかけ、素地を作ります。

プレス成形機で作られた素地は、横から粘土が少しはみ出ていますので、はみ出た余分な部分をナイフで切り取って縁を滑らかにしていきます。これは手作業なのですが、Christophe氏が制作する磁器の数を考えると、気が遠くなるような地道な作業ですね。
そもそもこのアトリエで「機械」と呼べるものは先ほどのプレス成形機と、後ほどご紹介する電気窯2つくらいのものです。釉薬を塗るのも含めほぼ全ての工程が手作業で作られるPICHONの磁器、定評のあるあの温かみはこの地道で丁寧な手作業の連続から産み出されるのです。

プレスされたばかりのPICHONの皿

準備が整った素地は、しばらくの間アトリエ内の棚などで乾燥させます。この乾燥作業が意外と難しく、その時々の気候(湿度、温度など)によって乾燥させる期間が変ってきます。焼きに入れるまで乾燥しているかの見極めはもちろんのこと、納期が迫っているところ雨が降り続いて湿度が高くなり完成時期が遅れそうになるということもたまにあるようです。

乾燥期が終わるといよいよ最終段階です。素地に釉薬を塗り、電気窯で焼きます。こちらでは無色の釉薬を使用していますが、焼くことにより美しい色がでます。下の写真の奥に見える白いコルベイユ(かご)にはすでに釉薬がかかっているのですが、焼く前は無色です。「これを焼くとこの色になるんだよ」と紫色の色見本を重ね合わせて見せていただきました。

PICHONの磁器を焼く前と焼いた後の比較

ざっと簡単にご紹介させていただきましたが、完成まで数十の工程があるそうです。

とても楽しく有意義だったPICHONのアトリエ訪問。トラディッショナルなモデルも新しいモデルも、数多くの磁器を見て圧倒されました。ちなみにPICHONの製品は受注生産・販売が基本ですので、運良くサンプルがある場合を除き、希望のモデル・色をアトリエで探してその場で購入するのは難しいかと思います。
今回発注分の調整やこれからの仕事の進め方に関する話し合いも済ませ、Christophe氏のお母様(6代目のマダム)も一緒に記念写真を撮りました。それではChristophe, à bientôt !

Christophe PICHON, Christopheの母,オーナーのラファエル
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