マルセイユのレストラン Au bord de l’eau

Bonjour 皆さん!

お待たせいたしました、前投稿の「リル・シュル・ラ・ソルグとメゾンデュモンド」で最後にお伝えした、帰国日前日のイベントをご紹介いたします!

何ヶ月か前のことですが、マルセイユ(Marseille)在住の方から、マルセイユ南方の海岸沿いに当店と同じ店名のレストランがあるということを教えていただきました。ランチに行ったところとても美味しかったので、ぜひ訪ねてみてね、とのこと。

同じ名前のレストランがフランスに何軒か存在するということは把握していたのですが、まさかそのうちの1軒が買い付けの活動範囲であるプロヴァンスにあるとは驚きでした(実は1軒どころか2軒もありました)。

当店の店名は”Au Bord de l’Eau”で、日本語訳は「水のほとりに(で)」です。1号店は、小さなせせらぎの流れる森の中で産声を上げました。開店前、せせらぎを眺めながらあれこれ店名を考えていた時に、フォーレの歌曲「水のほとりで」(Au bord de l’eau)がふと頭に浮かんだのです。

後記:店名といえば、2023年10月に新規オープンするアンティークジュエリーショップの名前は「メゾンマエアス(Maison Mahéas」。フランスの伝統をご紹介する、という意を込めて母の旧姓を使用しました。

ビジネス面だけを考えれば短く覚えやすい名前の方が良いのですが、”Au bord de l’eau”のロマンティックな響きを捨てることはできませんでした。どのみちビジネス度外視のプロジェクトでしたので、これでOK!

すみません、いつもの悪い癖で延々と前置きが続いてしまいました、とっとと本題に入ります。

帰国日前日に当店と同名のマルセイユのレストラン”Au bord de l’eau”に行ってきました。観光スポットとして有名な旧港(Vieux Port)から海岸線を南に20分くらい走った場所にあります。「走った」はもちろんランニングではなく車です、10kmくらいの距離なので気合でランニングできないことも無いですが。レストランは小さな漁港に面し、石灰岩の白い岩壁を背後に擁する素晴らしいロケーションにありました。

マルセイユのレストランAu bord de l'eau

前段でお伝えしたように、マルセイユには”Au bord de l’eau”という名前のレストランが2軒あります(この投稿を書く前に検索して判明しました)。私たちが訪れたのは、南のMadrague de montredon港の方です。

店舗は道路をはさんで山側と海側の両側にあります。海側はテラス席と広めの屋内席、山側はごく小さなテラス席と厨房&カウンター席のある母屋。母屋の間口はかなり狭いのですが、Google Mapで上から見たところ、京都の町屋のようにかなり奥行がありました。

Au bord de l'eauの東側の建物

予約はしていなかったのですが、冬の平日でお客さんが少なかったこともあり、自由に席を選ぶことができました。選んだのはもちろん海側のテラス席。このロケーションで他のチョイスは無いでしょう!2月の後半にもなれば最高気温が15℃近くになることもあるプロヴァンス、昼時で晴れていれば外のテラス席でも超快適です。

次の写真は海側部分のエントランス正面。窓の向こうに港が見えて、期待感マックスです!はやる心を抑えて今日のおすすめも見ておきましょう。

マルセイユのレストランAu bord de l'eauの海側エントランス

屋内席を覗いてみました。予想以上に広い。シーズン中は満席になるんだろうな。

マルセイユのレストランAu bord de l'eauの室内席

肝心のテラス席ですが、いろいろ不手際があり、小さく圧縮されたこの一枚しか手元にありません。特にPCでご覧の方、いきなり極小画像ですみません。。。

テラス席でマルセイユの友人夫婦とともに

私たち夫婦と、マルセイユ在住の友人です。奥様が日本人、ご主人フランス人のご夫妻で、のっぺらぼうではありません。大人の事情でお顔を加工しました。南仏の太陽を浴びて光り輝く私の頭頂もふさふさに加工したいような気がします。

奥に見える港は”Port de la Madrague de montredon”。”Madrague”はプロヴァンス語で、主にマグロを捕る定置網の一種のこと。”montredon”はオック語で、「丸い山頂」という意味です。なぜ「丸い山頂」?と気になり、フランスのWikipediaを調べたところ、この港の裏手にある”Mon Rose”という丘を指すのだろう、とのことでした。

“Port”は「港」ですので、つなげると「Mon Rose丘のマグロ用定置網の港」ということになります、わかるようなわからないような。細かいところを中途半端に深堀りしてしまいました。

Port de la Madrague de montredon

プロヴァンス語(provençal)はオック語(occitan、別名Langue d’Oc)の変種の一つです。オック語は、スペイン、フランス、イタリアなど地中海沿いの南ヨーロッパで広く使われていた言語(の総称)で、フランスでは数十年前までボルドーからニースあたりまでの南フランス地域で話されていました。ワイン好きな方であれば、ワインの原産地呼称(AOC)である”Languedoc-Roussillon”や”Pay d’Oc”を耳にされたことがあるかと思います。皆さまご存知のブランド「ロクシタン」(L’OCCITANE)の”OCCITANE”は”occitan”の女性形ですが、この場合の”occitan”は「occitanie地方の」という形容詞で、「オック語」という意味ではありません。

”Port de la Madrague de montredon” は小さく、港というより「入り江」という表現の方がしっくりきます。カモメの鳴き声と波の音以外、何も聞こえません。

ちゃぷちゃぷというゆったりとした波の音を聞いていると、なぜかまるで昔からずっとここに住んでいるかのような錯覚にとらわれます。頭の中をBS日テレの「小さな村の物語」のテーマ曲が流れていきます。あ、ここはイタリアではなくフランスなんだと気づき、我に返りました。波音の催眠術にやられたようです。

市街地から離れているとはいえ、ここはフランス第2の大都市マルセイユ。海の透明度と美しさには驚かされました。

マルセイユ

オーダー前、当店の名詞を持って厨房のある母屋に挨拶に行きました。「日本で同じ名前の店をやってるよ!」とオーナーに伝えに行ったのです。小魚のフリットとか、ちょっとしたものをサービスで出してくれないかな、などと見返りを期待していなかったといえばウソになります。とりあえず、「おお、日本で!」と感動してもらえたのですが、結果そういったエキストラボーナスは何もなし。お会計もメニュー価格通りでした。世の中甘くないですね、フランスでも。

メニューの表紙は南仏の海辺をイメージさせるライトブルーで統一されていて、何やら何行かの文章が書かれています。「起伏のある広大な丘の下にあり~」で始まる、この素晴らしいロケーションを賛美するポエムでした。最後の文は”Voilà pour le décor !”「さあ、景色をご紹介しましたよ!」あとはメニューの中を見てね、といったところでしょうか。

マルセイユのレストランAu bord de l'eauのメニュー

もちろん海鮮料理中心のメニューです。まずはスープ・ド・ポワソンとサーモンのタルタルを皆でシェアしました。漁港レストランの魚介メニュー、美味しくないわけがありません!

スープ・ド・ポワソンとサーモンのタルタル

フランスのサーモン(Saumon)は日本で獲れる鮭とは種類が違い、北大西洋に分布するタイセイヨウサケ(=アトランティックサーモン)です。シロサケ(サケ)、ギンザケ、ベニザケなどの鮭はサケ属に属しますが、タイセイヨウサケはサルモ(タイセイヨウサケ)属という異なる属の魚です。サケ属もサルモ属もサケ科ですので、近い仲間ではあります。(MARUHA NICHIRO「SALMON MUSEUM」より。)
日本でも「サーモン」という名前で売っているものは、いわゆる鮭ではなくタイセイヨウサケであることが多いようです。

スープ・ド・ポワソンは、もちろんルイユ(rouille、ニンニク・卵黄・トウガラシ・オリーブオイルなどを混ぜて作る南仏のソース。ブイヤベースのソースとしても有名ですね)とクルトンを添えて食べる地中海風。わが奥様の大好物です。

“Soupe de poissons”は読んで字の通り「魚のスープ」ですので、魚のスープはみなスープ・ド・ポワソンなのです、ってわかりづらくてすみません。厳密に言うとルイユなどを添えて食べるこのタイプのスープ・ド・ポワソンは、”méditerranéenne”(地中海風)や”Marseillaise”(マルセイユ風)などという単語が後ろに付きます。あくまでも厳密には、ということで、このあたりではみな単にスープ・ド・ポワソンと呼んでいます。

さて、次は魚のプレートです!私は入店前に黒板でチェックしておいた本日のおすすめの一つ、”Duo de Merou et St-Jacques”(ハタとホタテのデュオ)。”Duo de”は、メイン食材が二つあるときにフランスのメニューでよく使われる表現です。

Duo de Merou et St-Jacques

素朴なビジュアルではありますが、ハタもホタテもとても柔らかく美味でした。塩コショウ程度のシンプルな調味料でソテーしてあるだけなので、新鮮な素材の風味が前面に出てきます。何種類かある付け合わせやレモン汁をからめて、それぞれまた違う味を楽しむことができました。

私をはるかに上回る食いしん坊のわが奥様は、魚介のいろいろ盛り合わせ、みたいな贅沢プレート。

魚介の盛り合わせ

車エビ、ホタテ、鯛、ハタなどの魚介がこれでもかとうず高く盛られています。写真ではわかりづらいのですが、かなりボリュームがあります。もうお腹いっぱい~無理~、と言いながらも完食。恐るべき胃袋です。

“Dorade/Daurade”(=鯛)、”S(ain)t-Jacques”(=ホタテ)、”Gamba”(=車エビ)はフランスのメニューによく登場しますので、ご存知ない方はぜひこの機会に覚えておきましょう。

フランス人のホリデーランチのように、のんびり2時間ほど楽しく語らい、美味しく食べ、ワインを楽しんだ(ドライバーはフランスで運転が許容される一杯)、至福の時間でした。滞在期間が短く忙しい買い付けでしたが、最後の最後にゆっくり楽しくくつろぐことができました。今回の買い付けNo.1といえるHappyなひと時!これだからプロヴァンスは止められません。

レストラン”Au bord de l’eau”の住所は、15 Rue des Arapèdes 13008 MARSEILLEです。投稿の始めにお伝えしたように、マルセイユには同名のレストランが二軒ありますので、お間違いのないように。

バス(19番線Madrague Mont Roseバス停下車)で行くこともできますが、できればVieux Portあたりから海岸線を車で行ってください。天気が良ければ、とてつもなく美しい青空と紺碧の海を満喫することができます。特に市街地を出てからしばらくの間は海の真横を走りますので、周りは青一色で爽快です。マルセイユを「美しい」と感じたのはこのときが初めて。

厳密に言うとマルセイユはコートダジュールから外れるのですが、この海岸線の雰囲気はコートダジュールそのもの!

マルセイユの海岸道路

2週間の滞在ですっかりフランス人化した私は店近くに無理くり路駐しましたが、ご心配な方は余裕のあるこちらに駐車されると良いと思います。店にさらに近い場所にも停められそうなスペースが何か所かありますので、GoogleMapの衛星写真でチェックされてみてください。

なお、先ほどご紹介したバス停は店まで徒歩3分くらいの距離にあります。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
またお会いしましょう!

Raphaël

タイトルとURLをコピーしました