ラコストとカシ ひと味違うプロヴァンス

Bonjour 皆さん!

今シーズンはダイジェスト版形式でお届けしています。そうなった理由が気になる方は「アンティーク買い付け – 2月版」をご参照ください。

宣言したはいいものの、実際に書いてみるとなかなかダイジェスト版にはしづらいものですね。。。
単にエピソード数を減らしただけなんじゃね?という突っ込みは覚悟しております(汗)

初めてこのブログにたどりついた方にご説明しておきますと、フランス買い付け紀行には二つの主要テーマがあります。一つ目はアンティーク・ブロカント買い付け、二つ目はプロヴァンスの村や町です。

前投稿でアンティークやブロカントなどのフランス買い付けに関連する出来事を書きましたので、本投稿では今回訪れたプロヴァンスの村や町(の一部)をご紹介することとします。

空港、滞在先や買い付け場所を除き、今回の買い付け期間中に30分以上とどまった町や村をざっと挙げてみましょう。モンペリエ(Montpellier)、リル・シュル・ラ・ソルグ(L’Isle sur la Sorgue)、イエール(Hyères)、ルールマラン(Lourmarin)、カシ(Cassis)、ラコスト(Lacoste)、アンスイ(Ansouis)、キュキュロン(Cucuron)、他にもあったかもしれません。整理してみると意外と多いものですね。

何しにフランス行っとんねん!と言われそうですが、車さえあれば一日でかなり多くの村や町を回ることができますよ。買い付けの移動中にランチがてら少し立ち寄る、ということもできます。

ダイジェスト版とはいえ、町や村の数がこれだけ多いと全てを紹介するのは不可能。

そこで二つだけ選んでみました。選択した基準は、観光客のツアーに組み入れられるほどメジャーではないけれど、超有名な観光地とはひと味もふた味も違う個性的な村や町。

今回はラコスト(Lacoste)とカシ(Cassis)をご紹介します。南仏に行かれる機会がありましたら、ぜひ訪問先候補としてご検討くださいね。

それではまずリュベロン地方の村ラコスト(Lacoste)からいきましょう。「ボニュー(Bonnieux)のご紹介」でこの村の遠景をお見せしていますので、あらかじめアクセスいただければさらに楽しくこの投稿をご覧いただけると思います。

また、リュベロン地方ってどこ?というギモンのある方は「ルールマラン(Lourmarin)のご紹介」の冒頭部分をご覧ください。

ラコストはどのような村なのでしょうか。次の一枚がまさにラコスト村のイメージを表しています。

Lacoste村にあるゴシックスタイルの石の門

とにかく石、石、石。真冬という季節を差し引いても、緑が少ないです。土も見えません。この石だらけの街並みはレ・ボー・ド・プロヴァンス(Les Baux de Provence)を彷彿とさせます。

ご参考までに、以前訪れたレ・ボー・ド・プロヴァンスの写真を一枚。有名な観光地です。

レ・ボー・ド・プロヴァンスの石だらけの街並み。

ラコストと言えばあのサド侯爵。そう、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、サド侯爵が一時期住んでいたお城があるのです!

ラコストの城は11世紀に建てられたもので、プロヴァンスの名家であるシミアヌ(Simiane)家が所有していました。シミアヌ家からサド家の手に渡ったのは1600年~1700年頃(譲渡の時期・経緯について諸説あり)。「サド侯爵の城」として有名ですが、実際に彼がこの城に滞在したのは1769年から1772年までの4年弱で、さほど長くはありません。

それではお城を目指して石の坂道をどんどん上っていきましょう。小さな村ですので、さほど遠くはありません。

ラコスト(Lacoste)の石の坂道。

シンプルな道のりなのですが、石造りの建物に挟まれ無機質な迷路に迷い込んだかのよう。この異次元感でワクワクすること請け合いです。

道中、教会の鐘を二つ見ることができます。

ラコスト村にある鐘楼
ラコスト村の教会の鐘

一つ目はcampanileと呼ばれるタイプの鐘で、教会の建物から独立した鐘楼。二つめは教会の上に設置されている鐘で、このタイプはclocherと呼ばれます。個人的には時代を感じる一つ目が好み。

そんなこんなで村の頂上に建つお城にたどりつきました。

ラコスト村のお城。サド侯爵が住んでいたこともある。

上の写真は最も廃墟感が伝わる部分を撮影したもの。このお城は以前完全に廃墟化していたのですが、2001年にピエール・カルダンが購入し、大規模な改修を行いました。

その後、お城の西にある採石場跡でピエール・カルダンが企画したラコスト・フェスティバルが毎年開催されています。劇、ダンス、音楽、オペラ界の新進の若手を紹介する目的で運営されているアートイベントです。
※ピエールカルダンの没後このフェスティバルが行われなくなったと記載しているサイトもありますが、少なくとも2021年までは続いています。”pierre cardin FESTIVAL de LACOSTE

小さな村ですので、レストランやカフェなど飲食店は2~3軒しかありません(私が見た限り)。今回はオフシーズンでしたので、物販店も含め営業中の店は一つも見つかりませんでした。

ルールマランやゴルド、リル・シュル・ラ・ソルグのように観光客が集まるオサレな村ではありませんが、「知らんだろうけど、あのサド侯爵の城がある石だらけの不思議な村に行ってきたぜ!」と人に自慢できる尖った村だと思います。二度目以降の南仏旅行にいかがでしょうか。

次にご紹介するのはカシ(Cassis)。ラコストとは真逆な雰囲気の町です。

まず町名の読み方から。皆さんご存知のベリー類カシスをフランス語で書くとCassis。町のカシと同じ綴りです。その流れなのかいろいろな資料でCassisの町が”カシス”と表記されていますが、正しくは”カシ(カシー、カッシ、カッシー)”です、お間違いなきよう。
※ベリー類のCassisはフランスでも”カシス”と読みます。

カシは西側の境界をマルセイユに接するこぢんまりとした地中海沿いのリゾート地。町の中心に多くのプレジャーボートが停泊する小さな港があり、その港を囲む山の上までお洒落な住宅・別荘地が広がります。海に近い場所にはリゾートマンションとおぼしき建物もちらほら。

カッシの港。プレジャーボートやレストラン、リゾートマンションなどが見える。
山の上まで広がるカッシの住宅・別荘地

カシを語る上でワインを避けることはできません。カシはリゾート地であるだけでなく、AOC認定されている白ワインの銘醸地でもあるのです。

生産量は少ないのですが、内外でとても評価が高く、プロヴァンスの美味しい白と言えばまずカシの名前が挙がるほど。基本的に赤オンリーの私もたまに飲みたくなる美味しい白ワインです。

コート・デュ・ローヌやペイドック、ヴァントゥー以外の南仏ワインがさほど流通していない日本でも、デパ地下のワイン売り場やワイン専門店でカシが販売されているのをたまに見かけることがあります。生産量の少なさを考えると奇跡的なこと。

日本での売値は3,000~4,000円くらいでしょうか。フランスでも10~20ユーロくらいの価格が付いていますので、高級品とは言えないまでも、デイリーワインよりはワンクラス上の位置づけです。ワインマニアの方であればひょっとしてご存知かもしれませんね。

買い付け拠点近くのスーパーで控えめな価格の1本を見つけることができました。日本に輸入されているカシはもう少し上のランクのものです。運よく出会うことがありましたら、ぜひお試しください。

Cassisの白ワイン

カシの良いところは天候が安定していること。これまで何度も訪れていますが、曇っていたり雨が降っていたりしたことは一度もありません。それもそのはず、ググってみたところ、マルセイユやセレストなどと並んでフランスで最も年間日照時間が長い町の一つなのだそうです。

この町のもう一つ良いところは、観光シーズンのピーク時を除き、比較的静かなこと。リゾート・観光地ではありますが、ニースやカンヌほど混みあっていません。小さな町であるが故に駐車場も少なく、そもそも多くの人を受け入れるキャパが無いのです。

このブログを読んでいただいている皆様だけにヒミツのパーキングをお教えしましょう。Parking Cassis La Madie です。

有料ではありますが港まで歩いて行くことができますし、奥にはプライベート感満載の砂浜もありますよ!細い道をぐいぐい進んでいった先という目立たない場所にありますので、いつでも空いています。

そろそろ港に戻ってランチする店を探しましょう。

プレジャーボートと港周辺のカラフルな建物

他の地中海沿岸の町同様、港に接するほとんどの建物がカフェやビストロ。席から見える景色だけを求めて観光客が集まってきますので、決して激ウマでもなければコスパが良いわけでもありません。トリップアドバイザーなどで評価の高い店の多くは港の中心から離れた場所に位置しています。

そのあたりの事情をよく判ってはいるのですが、私たちのCassisランチは常に港のカフェやビストロになります。素晴らしい景色とカモメの鳴き声、潮の香りや波の音、プロヴァンスの青空と太陽を楽しみながらテラスで食べる食事に代わるものはありません。

この日ランチに訪れた店は”Poissonnerie Laurent”、「魚市場(魚屋) ロラン」。名前だけで気分上がります。

Cassisの魚介レストランPoisonnerie Laurent

見晴らしが良くプライベート感のあるテラス席に通していただきました。まだ2月ですがフリースとマフラーだけで十分暖かく、外席で全く問題なし。奥様のスマホから1枚拝借しました。

Cassiのカフェでくつろぐラファエル

席から歩道を挟んで真横に港、港の向こうにはそそりたつ石灰岩の岸壁が見えます。絶景かな、絶景かな!短くとも心からくつろげる時間は買い付けや移動の疲れを吹き飛ばしてくれます。

Cassisの港とその後ろに山や岸壁が見える景色

港に停泊するプレジャーボートは比較的小さめでシンプルなスタイルのものが多く、ニースやカンヌの超豪華な巨大ボートのような威圧感がありません。

マルセイユのレストラン Au bord de l’eau」の舞台となっているMadrague de montredon港も小さな港でしたが、カシはまた少し雰囲気が違います。

「ひなびた」というよりは、南国的なリゾート感がありながらも派手過ぎず落ち着きのある港、といったところでしょうか。比べ方が変ですね、ごめんなさい。

海の後ろに見える石灰岩の岸壁はかなりインパクトがあります。巨大な石灰岩の岸壁はプロヴァンス、コートダジュールの代表的な景色の一つですね。

コートダジュールと言えば、多くの方がニースやカンヌをイメージするのではないでしょうか。では同じく地中海沿いの町カシはコートダジュールなのかそうではないのか?というギモンが沸きましたので、日仏両方のWikipediaで調べてみました。ちなみにコートダジュール(Côte d’Azur)の”Côte”は海岸、海辺という意味です。

「コートダジュール」ってどこ?

  • フランスのWikipediaーー”allant de Cassis à Menton” ← カシからマントンまで
  • 日本のWikipediaーー”ふつうトゥーロンを西端、イタリア国境を東端とする”

マントンはイタリアとの国境にある町。東端は一致していますが、西端が40kmくらい離れていますね。

フランスのWikipediaには”ces limites variant selon les auteurs”(使う人によって境界は異なる)という注釈がありますし、日本のWikipediaも「ふつう」という単語で始まっていますので、厳密には定まっていないということでしょう。

本家本元のフランスWikipediaでは基本カシもコートダジュールの町とされていますので、自分的にはカシはコートダジュールの町であるということにしておきます。

そんなこんなしている間に料理が出てきました。私は山盛りのムール貝。

調理され、皿の上に山盛りにされたムール貝

ニンニクとタマネギのシンプルなムール貝をオーダーしようとしたのですが、「ここは”Moules Poulette”がウリなんだからそっちにしなよ!」と半強制的にお店の名物に替えられてしまいました。

だったら他のムール貝はメニューに載せておくなよ!という感じですが、それなりに美味しかったので良しとしましょう。ちなみにPouletteはソースの名前で、バター,レモン、卵黄から作ります。

奥様は毎度おなじみ、魚介メインの店で必ずオーダーするスープ・ド・ポワソンと、本日のお勧め、タイか何かの魚のソテーです。

スープドポワソン
魚、ポテト、野菜のソテーとフレンチフライ

この素晴らしい環境で料理が美味しく感じられない訳はありません。合わせるワインはもちろんAOCカシの白ワイン!コスパやら何やら面倒くさい話は関係ない世界、至福のひと時でした。

カシと隣町マルセイユの間にはカランク(Calanque)と呼ばれる入り江がいくつかあります。カシの港からカランク巡りの遊覧船が出ていますので、お時間のある方はぜひトライしてみてください。

カランクとは、簡単に言うと両側を急な石灰岩の壁に挟まれた入り江のこと。ただの入り江ではありません。わざわざカランクという専用の名前が付くほど個性的で美しい景勝地なのです。ご興味のある方は「カランク」または”Calanque”でググって写真をご覧になってみてください。

カシの海は水質がとても良く、無色透明。

海の水の美しさが際立つCassisの浜辺の波打ち際。
Cassisの透明な海。海の底の石がくっきり見える。

遊覧船から海底や魚がくっきり見えますので、カランク見学と合わせ、大自然を満喫できる素晴らしい体験になること請け合いです。

今回はダイジェスト版となったプロヴァンスのご紹介、いかがでしたでしょうか。次回の買い付けでもまた新しい町をご紹介できればと思います、お楽しみに!

それではまた近いうちにお会いしましょう、à bientôt !

Raphaël

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